如月町晦日界隈/もっぷ
歌わないでほしい外が歌っている
空が久しぶりに色彩を取り戻したきょう
けれども風の帳に覆われて
わたしはあきらめた
木琴の音色はいったい誰が担当しているのか
いろいろにたずねてみるし
そのことは徒労に終わるとも悟っている
マグがかなしく謝りながら
卓袱台に座ってそんなわたしを
みるともなしに、午後の四時
潰れる頃合いだと歎いていることも
知っていてくれるのか
マグはマグで湯気をあきらめ
ちいさな部屋のなかのあちらこちらのみなが
肩を寄せ合ってため息で飽和されてゆく
五畳間は
やさしく頷いて
なにもできやしない
在るって喩えるならば冬だよ一年中が
思惟の結論が気配だけで諭している
ポン柑の橙色もめそめそと押し黙り
二月の終わりの情景
ひたすらに待たれている春よ、
もうすでに影すら失くしつつあるのは
ふゆだ、墓石も与えられずに供養塔ゆき
切符を握りしめてくちゃくちゃに
なるほどに握りしめて
ふゆは、もう、
ふゆは
しずかにやはりあきらめて
手荷物も軽く、最後に
カシオへなにかをことづてて
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