いまさらの都合/もっぷ
 
とは呼ばれないし
呼ばれたくもないから胸に名札を縫いつける
間違えないで(間違えないで)と繰り返し
ふと春を直視することに決めた
、出来心に、敵は、いない、瞬時に
「私」でも構わないと胸の紋章を捨てた白日
すべてはみな太陽が

きょうこそ桜花がと煩くて水という水を
飲み干すがそれでもデリートが困難な
海流がいまだこの季に気づかずに
(彼らには名は捨てられない)
わたしは嬉しくなり太陽を称えてみるが
気配が朱色の刻限となり黙殺される
つまりまたみなしごとして家路につく「私」
みあげると雁行がすべらかに(異なる時軸で)

さよならはたぶん最後の挨拶なのだという
信仰だけを懐きながらついにわたしは決定し
砂原を求めて海へと向かう(海へ)
、のこりは標してあります
航海日誌の唯一の書き込みをみてください
かならず、かならずみてください
(「私」は弁明の必要を感じてはいない)


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