揮発 (2005.1.16)/和泉 輪
 
 
 冬には空が降下する
 みんな誰も見てないし
 奪えるものがあるなら
 私から奪って構わない


(雪霧の向こうに浮かぶ
 あれは管制塔の光源だ
 低い轟音を響かせて
 離陸する鉄船が見える)


 やがてもう間も無く
 船は日没の先へと消える
 そうして私は残された
 老いた憧憬の手を引いて──


 冬には空が降下する
 凍りつく地との間で
 夜と朝のすきまで
 揮発する私の魂だ
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