ボスとブリューゲルはいっぱい赤い種をまいていた/天野茂典
柳と風
プラドー美術館
黒いマントの少年がよぎる
鳥ではない
黒いマントの少年だ
マドリッド
ボスとブリューゲルを見に
はるばる来たのだ
信号待ちに
現れた少年は赤いマントではなかった
麦笛を吹きながらゆく
天才ランナーのようだった
まだ20世紀の頃だ
短距離走者の地図
長距離走者の音楽
ゴヤをいっぱい見た
圧巻だった
薄絹をまとったマヤ婦人は
こげ茶のバックに浮き出ていた
ボスとブりゅーゲルが霞んで見えた
それにしても風のように現れて
去っていった黒いマントの少年は
柳の陰にでも隠れたのだろうか
幻視
幻覚
少年は
詩の直喩(シミリ)だった
ボスとブリューゲルはいっぱい赤い種をまいていた
のちにシュールレアリスムと呼ばれた
ひまわりだった
2005・02・6
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