山/葉leaf
 



私たちは山から産まれて
いずれ山へと帰っていく

山肌から毛髪のように木が生えている
どんな響きも逃すまいと
毛髪の中に嵐の全音階を閉じ込めて
山はひたすら記憶する
雨も光も風も雪もすべて言葉を持っているから

山を構成する岩石の量だけ山は賢く
近づけばその賢さは高さとして現れ
山は人間の歴史とは異なる歴史を思考している
出来事の人間にとっての意味と
山にとっての意味は全く異なるから
例えば何気ない日の一差しも
山にとっては記録すべき大事件である
山は賢さゆえに絶対的な沈黙を守っている

自然には人間も神もいらない
山に神が存在するというのは
とても人間くさい発想だから
自然はただどんな人格も持たない自然であり
それゆえ人知とは異なる叡智で満ちているのだ
山は自我も意識も持たず純粋に賢い
山の頂に立って岩や木々に囲まれていると
恐ろしいほど密で静かな知恵で満たされてくる
その知恵が私の息に交じってくると
私はもはや神でも人間でもなくなる

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