酩酊の夜/竹森
 
「あぁ、僕、僕ね。愛。愛を、信じてみよう、とか、考えてみたりするんだ。レストランの窓から漏れる灯りに照らされて、橙色の染み込んだ、木の幹を舐めてみたりする・・・・・・苦くて、甘い。見知らぬカップル、家族さん。暖かい雰囲気のおすそ分け、どうも、ありがと、う―――」

右肩を夜空から突き離そうとする、缶ビールの詰め込まれたビニール袋。雨上がりの地面や電柱は両生類の皮膚を想起させる。それに加えて夜空の体臭。地面と両肩が織り成す角度は微妙な非平行で恍惚の予感。破裂の時を待ち構えている灰色が、未開栓のアルミ缶だけとは限らない。歩き慣れた緩やかなカーブに曲がり易さを改めて感じ取る。足音が自分の物では無い様
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