編み物にまつわるあれこれ/そらの珊瑚
 
。それではこの作品の持つ共感性が失われてしまうだろう。ああ、そうか、「よる」ではなくて、これは「よ」と読ませるのだ! そして、ふたたび声に出してとなえてみる。すると「よ」が「世」に変わった。そんな私だけの答えにたどりつく。だから、うたって面白い。
 
 この作品のまなざしが好き。「ひとりの夜」つまりふゆの嵐さえも孤独に比べたらなんのことはなくて、編み込むモノが尽きれば嵐さえも編み込み、
 そんな寄る辺のない時間を過ごした「君」を、
 もしかしたら今、そうやって過ごしている君を、
 遠くでみつめるような作者のまなざしが、とても好き。
 作者はおそらくそんな孤独というものを知っていて、またはその渦中にいて、セーターの代わりに、うたを編んでいるのだろうと想像する。
 うた、というものは、作者の命がなくなってなお、人に心がある限り、命ながらえるものであるなあとしみじみと思う。  

 


 
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