漂着　（連作８）/光冨郁也
　
揺れている。揺れている船の上、喉が渇くので、ペットボトルの口を開ける。ミネラルウォーターを飲む。
（ひたすら漂いたい気分だ）
　わたしは退院後、船で島に向かっていた。誰もいないところに行ってみたかった。風が吹いている。甲板の椅子にすわり、海を眺める。曇った空に波立つ海。わたしは立ち、手すりに近づき、そこから薬を海に捨てた。錠剤の入った銀や金のパッケージが風にあおられ、光っては波間に消えていった。

　その日の午後に港に着き、民宿に泊まった。簡素な料理を出してもらった。赤い刺身に、白いご飯。
　見たこともないバラエティ番組、地元のローカルＴＶを見ながら食事をとった。霧の日に無人島が現
[次のページ]
[ｸﾞﾙｰﾌﾟ]

---

戻る　編　削　Point(8)