狂気に至る夜/アクアステル
 

最終電車はとっくに出たけれど
たまには線路の高架に沿って
歩いてみるのも悪くない
街路樹にはクリスマスの飾りが
まだ残っているし
星も今夜はきれいだ
誰もいない公園のブランコ
月に照らされる電信柱
路地裏の稲荷神社
電車からでは見つからない
街の小さな断片が
夜になると眼を覚まして
自我のエネルギーを放つ
夜のあちらこちらから届く視線が        
心の奥を覗こうとする
わたしは少し早足になって
人の気配を探したけれど
ラビリンスと化したこの街では
日常のシステムは分解されて
倒錯した世界を再構成する
そんな世界に迷い込んだ
有機体としての人間は
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