カンガルーのポケット/オダカズヒコ
カンガルーはハーバーを見下ろす見晴し台の方へ、身ごなしも軽く入っていった。
海から吹き上がってくる、風のざわめきが聴こえ、ヨットが揺れている。
ハンドブレーキを、ギューイっと、引いた黒猫が車から降りる。
赤いピンヒールの彼女はサングラスを掛け、メンソール入りの細いタバコに
火を点けた。
「そこの道路は、ペンキの塗りなおしが終わったばかりだね」
って、カンガルーは黒猫に言った。
彼女は聞いているのか、いないのか? アンニュイな仕草でロングのおろした髪に、
指を入れた。
カンガルーがこの島に滞在して4日目。太陽は燦々と輝き。
黒猫のマリーはカンガルーをこの海
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