漆色の夕陽が落ちて(九)/信天翁
 
       雪雲が覗いている
    疲れた卒寿の独り暮しに
  隙あらば発破を仕掛けようと

 庭木も垣根も身もだえしている
    そのうえ 漆色の夕陽と
   きつい北風に 門扉さえも

だが 一瞬 日差しが漏れたとき
  居間の一角にひろがったのだ
いまは亡き妻の小さなおもかげが
戻る   Point(3)