漆色の夕陽が落ちて(九)/
信天翁
雪雲が覗いている
疲れた卒寿の独り暮しに
隙あらば発破を仕掛けようと
庭木も垣根も身もだえしている
そのうえ 漆色の夕陽と
きつい北風に 門扉さえも
だが 一瞬 日差しが漏れたとき
居間の一角にひろがったのだ
いまは亡き妻の小さなおもかげが
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