ウサギの階段/竹森
 
のことだよと、ごまかすあなたの股間からズボン越しに香る精液の濃厚な臭い。それは拭い去りようもないので、あなたが仲良くなれるのは精液の臭いを知らない心優しい少年少女たちだけ。彼らはあなたが綴る童話に夢中になって耳を傾け、関わるなと叱る母親の静止も無視して、フランスパンの切れ端を片手に公園まで駆けていく。朝の白い光から精子を連想せざるを得ない不幸なあなただから、彼らの優しさに涙を流し、彼らの事を、可愛い可愛いウサギと呼んだ。

間違いなく、彼らはウサギだった。嫌いなだけの仕事をこなし、好きな音楽だけを聴く。食べ物はその境界線だった。
戻る   Point(2)