閂は開かれる/るるりら
【閂は開かれる】
閉ざされた記憶の門のかんぬきが
思いがけない方法で開かれることを 私は知った
たとえば 少女の髪にあったリボンが
ほどかれた瞬間に急に大人び
何かを失ったかのような遠い目をしたとしたら その先にあるのは
青い空ではなく 未来の自分への便りだ
こころを射抜いた事柄は たとえ桜貝のように小さくとも
閂で閉じられた記憶世界では しずかに息をしている
すべてに光が注がれ同時に影が揺らいでいる
大人になり すっくと立つという単純なことこそを手に入れるために
捨てたつもりだったさまざまな雑多な事柄も
生命力のある記憶だけは やがて 大人になったつもりの
わた
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