エトピリカは歌に歌われていた/天野茂典
エトピリカを待つ
絶滅寸前の
マボロシの鳥
600mmレンズを据えて
何時間でも
ポイントを決めて
弟とぼくと
二人のカメラマンが
うみねこの飛び交う
狭い岬の突端
を狙っている
撮れるかも知れない
撮れないかもしれない
待つのだ
撮れるまで
海がしぶきを上げている
ここは北海道
太平洋沿岸
一日
二日
三日
エトピリカは現れなかった
このまま滅びてしまうのか
ほかに営巣地があるのだろうか
見えないものを見る
ぼくたちは見えない写真を
詩として撮ったのだ
うみねこの荒れる岬で
三日間は無駄ではなかった
エトピリカは歌に歌われていた
2005・02・05
戻る 編 削 Point(4)