逃亡者/森川美咲
私の中の憧れが
育って恋になる前に
さよならも何もなく
逃げるように去ったあなた
何度もくれた電話
尽きないおしゃべり
受験で訪れた都会
夜景を見ながらの電話で
今度は一緒に見たいねって
言ってくれたよね
だけどあの春
あなたの前に広がる未来は
眩しすぎた
一つの傘で歩いた
あの雪の午後が最後だったんだと
夏空の下やっと気づいた私
あなたはあの傘の下
私のいない未来を見てたのに
もう20年が過ぎ
未練も恨みもないけれど
忘れない名前
見つけたあなたのSNS
懐かしさに駆られて
写真の横顔に面影を探す
しばらくしたら閲覧不可
まさかのブロック
私に気づいて
また逃げた
あなたは私の名前に
逃げたくなるような
過去を見たの
それとも
あの春からずっと
逃げ続けているの
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