小学生の夜/宮木理人
 
小高い丘の上にあるアパートの一室で、ぼくはカーテンにぐるぐる巻きになってコロコロコミックを読んでいる。
いつも楽しみにしていたギャグ漫画が突然最終回を迎えた。最後からの2ページを、何度も何度も読み返した。
食い入るように絵と文字に集中して、そこから引き出される最大限の情報を入手しようと石になる。
情報がインプットされるごとにぼくの体はだんだんと現実を感知できなくなって、本当に指先から徐々に石になっていき、窓の隙間から夜風が入って来るけど、その冷たさが分からない。

初めて物語を体験したときから、腸で物事を考えるようになった。
本を閉じて夜空に目をやったとき、何かがおかしい、と感じた。
[次のページ]
戻る   Point(4)