回想/大島武士
 
「回想」

歩き慣れた田舎道を
自転車に乗れなかった日々を思い出して
忘却の悪魔に逆らいつつ歩いた

かつて通いなれた校庭の時計を見上げて
遠い日にかいた汗の匂いを思い出して
忘却の悪魔に逆らいつつ お茶を飲みほして

さえない小さな古本屋でずっとそこにある
「前世を記憶する子供たち」の本を手に取って
忘却の悪魔に逆らいつつ時間をつぶした

まだ行ったことのない
とても懐かしい大切な場所を
映画の予告編の中でだけ観て
想像した恐ろしいことを
立ち読みした漫画の中で
心を震わせ感じたことを
日々の中で忘れていく
若くして認知症の僕は

幼い日 商店街に
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