帰省/
マチネ
家の敷居を踏み越えた利き足はもう家に帰りたがっている
何か忘れものをしたと思おうと試みてみる
両手に 鞄に 不足はない
大切な書類も
筆記用具も
定期の入ったカードケースもそつなく準備されている
利き足はやむなく歩き出す
(私はこういう時に限って完璧な男なのだ)
(私には帰る気がないのだ)
(寄りかかるだけの蛋白質)
利き足は
そうではない足を引き摺りながら
絶対に帰れない場所に向かって歩いている
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