マリエロの海/オダ カズヒコ
 

牛乳ベースのスープにレチェが入った鍋に 
菜箸でつまんだカモノハシを一切れずつ入れる

黒いショールを纏い
髪をぞんざいにまとめたデニムのパンツに皮のブーツの女が
カモノハシに続いて鍋の底へ右足から入っていく

女が鍋の中で肩を震わせ
さめざめと泣いた後 鍋は十分に沸騰し
カモノハシも中までじっくりと煮込まれた

鍋底には
アスファルトで舗装されたばかりの幹線道路が一本通り
グァバ菓子工場へと木箱を作りに行く女の子たちが
郊外へ向かうバスに乗り込んで行く

<それはきっかりと 朝の7時半のことだ>

マリエロの港に
十数名ほどの密出国者のグループが居ると言
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