凍らない水/まーつん
 
 移りゆく事象に
 普遍性を見出そうと
 あなたは時を凍らせた
 記憶という名の冷却剤で

 汗ばむ肌に下着を貼り付け
 冷えた板張りの床の上
 道に迷った子供となって
 膝を抱えて座り込む

 綴じた瞼の裏側に
 愛しい誰かを閉じ込めて
 窓から注ぐ朝の光も
 カーテンを揺らす風の息吹も
 意識の内から締め出せば

 思い出の中から、
 歳ふることなき美しさを湛えた顔が
 永遠に溶けない微笑みを浮かべ
 あなたを見詰め返してくる


 でも、知っていますか


 時は凍ることのない水
 あなたにも、私にも
 その流れを止められない

 泳
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