朦朧詩/北井戸 あや子
 

悪夢はどちら?黒いまなこがゆらゆら振れて
見えるものはどれも、もう見飽きた色ばかりね
熟れた柘榴、かわいい首

ノート一面に血を
ポタポタ落としながら
希望だとかを柔らかく書き殴る
かじかんだ手をかざす暖炉の様な
無償の優しい言葉で埋めて、埋める
しかし私は身体にぽっかりと空いた穴の痛みさえ感じられず
今は肺を泳がせるサカナに似た絶望だけが
ただ一つの安息なのです

見えては隠れてしまう、かなしさは人差し指だけ残して
もう溶けてしまった
豆電球のオレンジに伸びた爪の白を透かせ
誰に言うわけでも無いおやすみは
ぽつり滴る雨滴
寝返りうって待ちぼうけ
さびしがりな言葉達
おとなしく胃液に沈めたまま
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