塒/シャドウ ウィックフェロー
 
塒と書いて「ねぐら」とよむ
人には塒が必要だろう
その場所で朝と夜を重ねるうち
いつしかそこが自分にとっての塒になる


住めば都というけれど
いろんなものがなじんで
しっくりとくるには時間がいる
見なれた顔に迎えられて
気をつかわなくていい時間が流れて
やがてそこに情報量ゼロで
違和感ゼロの状態が生まれる
そんな感じだろうか


君が正月に東京から帰ってきて
久しぶりに入ったお風呂場で
その汚れに声をあげたとき
君の塒はもうここにはないと思い知らされた


何もかもを他人の目で眺めて
かつて入りなれた場所を汚いと思うのも
それは仕方のないことさ

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