東の国の終わり方 (四行連詩)/乱太郎
紫の葉が落ちた時
生まれた頃の泣き声は還らない
腐敗が始まった土壌で
夢は悪臭を呆然と放って歌は枯れていく
耳の役目を終えた貝殻を二つだけポケットに仕舞い
少年は東へと永遠に消えていった
母親は残されたなどとは微塵も思わずに
今日も彼の抜け殻の処分に躊躇いが見られない
紅い葉が落ちていき
少年が持っていた貝殻の沈黙を探す
母親の溜息は木枯らしに掻き消されて聴こえない
耳のない季節が始まろうとしていた
シリウスだけが辛うじて視える宙を仰いで
手前のネオンの足元に
まるで少年を雪ぐかのような静寂が
香しくさやかに母親の歎きと少年の死をことづてて
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