海沿いの街/大島武士
 

小さな離れ島も 少しずつ
ここに住む人々の心に浸透して
ある時は詩に ある時は歌に
ある時は絵画に 映画になり
ある時は人を 遠くへ遠くへと誘ってゆく

僕は青い時代を遠く過ぎて ただ一人
坂の上でまどろむけれど
一隻の船が静かに
僕の暮らす街のほうへ 横切るのを見たら
たぶん明日から いや次の瞬間から
世界の頁をめくっているのだろう

世界を 読み尽くすことなどできないと
心地よく 絶望しているのに
いつも何かがざわついている
きっと多くの人々の中で
時の流れを止めたような
誰かが「少年の町」と呼んだ
この海沿いの街で

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