海沿いの街/大島武士
世界が
果てしないほど分厚い 一冊の書物に感じ
決して読み尽くすことのできないと
絶望する
重苦しさと 心地よさを
同時に感じて
「美しいものが正義だ」と言って
読むべき箇所と 読み飛ばすべき箇所を
区別しようと
昼の光の反射する 海沿いの道を歩き
ふっと路地に迷い込む
汚れたガラス戸の外れた民家の
何とも言えない風情に
魅了され 立ち止まる
決して読みつくせない世界で
胸が熱くなることばかり考えては
いけないのかもしれない
坂道を一人登り 片目をけがをした猫の
餌を食べる姿と 夕暮れの街を
写真に撮る
線路の下に掘られたトンネルも
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