パセリ/香椎焚
パセリは苦い
人生のようだ
と、いってみたものの
本当は特に苦いとも思わない
パセリはマリネに入れても美味しい
私が語りえないもの、それは死
死は語る、とこまでも深く
けれどもそれ自体は苦味ではなく
ただ、なにでもない
彼も、パセリを
食べたことがあっただろう
人生のようだと、例えばそのとき、言えただろうか
重大なことを感じたときには
きっともう遅いのだ
レモン入りのマリネは酸っぱい
人生のようだ
と、いっても同じである
真実に届くことはない
そのまま、ぼぉっとなる私は
パセリを粉々にちぎる
粉々にちぎる
命の尊厳、そんなはかない筈のものさえも
無心で彼に祈りながら
戻る 編 削 Point(5)