わたしの匂い/大覚アキラ
鼻を鳴らしながら
卑しく
いやらしく
寄ってくる
見たこともない男たち
心底
ぞっとして
鳥肌が立ったけれど
慣れない外国の風習は
往々にして奇異で忌まわしく見える
ただそれだけのこと
そう思い直して
辛抱することにした
郷に入れば郷に従え
というやつだ
くんくんくん
どうですかわたしの匂いはいい匂いでしょう
くんくんくん
道に迷ってここに来てしまったんです
くんくんくん
家に帰るにはどっちにいけばいいか教えてくれませんか
くんくんくん
わたしの言っていることがわかりますか
くんくんくん
わたしの匂い気に入ってもらえましたか
くんくんくん
くんくんくん
くんくんくん
気がつけば
いつのまにか下着さえ剥ぎ取られたわたしが
見たこともない風景の中で
嗅いだこともない匂いで会話する
見たこともない男たちに
わたしの匂いを嗅がれ続けているのを
わたしは
見つけた
戻る 編 削 Point(10)