わたしの匂い/大覚アキラ
気がつけば
とても遠くまで来てしまっていて
見たこともない風景に囲まれて
わたしが
呆然と立ち尽くしているのを
わたしは
見つけた
怖くなって眼を閉じたら
見たこともない風景は
一瞬で消えたけれど
嗅いだことのない匂いが
わたしを
包むように取り囲んでいて
ここでは
人々は言葉の代わりに
匂いで会話しているのだ
と知った
嗅いだことのない匂いは
聞いたことのない言葉と同じで
わたしを不安にさせるだけだ
みんなが
わたしの
匂いを
嗅ぎに
寄ってくる
目を閉じていても
瞼の裏側にはっきりと浮かぶ
飢えた野犬みたいに
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