水深0mの歌/天野茂典
 
 

   花と龍
   盲目の詩人が語る叙事詩
   わたくしが保護されている
   広場
   噴水と鳩
   駅舎に車両はない
   上野駅とローマ駅では
   蒸気機関車の匂いがする
   小岩井ミルクとコーヒー飲みながら
   花と龍
   市販されてはいない一枚の
   トランプを引く

   幾つもの星の匂いと混じりながら
   オデユッセイア
   日は確実に長くなっている節分
   イーリアス
   ぼくの叙事詩は
   タンポポまでにしあがるだろうか

   ピラミッドの底から一艘の船が
   宙にむかって船出してゆく


        2005・02・03
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