新年の詩?鎌倉霊園にて?  /服部 剛
 
左の墓石の下に、堀口大學の骨は永遠に眠り
右の墓石の下に、川端康成の骨は永遠に眠り

西方の山間に、今にも杏(あんず)の夕陽は沈み
新年の富士は琥珀に染まる姿を浮かべ
東方の空に、満ちようとする月は昇り

私は今、鎌倉霊園の丘の上にて
在りし日の詩人の声を、呟いた。


――夕暮れの時はよい時


妻にかけた携帯電話越しに
あーうーと
染色体の一本多い三才の息子が発する
言語未満の声

携帯電話をポケットにしまい  
墓石の前に立ち
稲穂の姿で、合掌する。


――日の本よ…
  詩心(ししん)を豊かに育むような
  杏の夕陽の国であれ  






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