海と陸/オダ カズヒコ
 



目を瞑っていると
死んでいるように見える老人
狂おしく時が抜け落ちる感覚に
急いで電話を握りしめた

あなたのいる世界と
いない世界
ふたつ世界の狭間で
軋む心

初夏の琵琶湖の疏水は
さらさらと便箋にしきつめられた手紙のようで
流れにのっていく青葉と
波間に抵抗する古木の枝とが
言葉と時間の
深い関係を結んでいる

鴨川から見える山が
好きだった

意志の実現として存在するものは
人間だけだ

ところでぼくらは
少し前に起こった大きな地震について
語り合っている

まるで”ささやかな”一つの恋が
二人の人生をさっぱりと変えてしま
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