新年/葉leaf
 



私が人を殺めて逃げてきたこの町では、もう長い間新年が訪れない。新年は何か巨大なトラウマのように忌避されていて、人々は年が変わる頃決まって不機嫌になる。大きな街道から海へ向かい、山と山に挟まれたこの陸の孤島では、いつの間にか時間の新陳代謝が狂ってしまい、テレビも見られるしスマホも使えるかわり、なぜか新年が訪れないのだった。12月の次に1月が来る代わりに、13月、14月が訪れ、その調子で現在では144月にまで達してしまった。町の人たちにとってそれは当然でひどく気分のいいことらしい。
この町は全く新しく、人の目を避ける形で逃亡者たちが作り上げた町だから、互いに秘密を詮索せず、ひたすら平和で
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