忘れ物/オダ カズヒコ
ましょう
男は言った
俺は電車にひかれ
グチャグチャになった自分の体を見ていた
はねられたのか?
俺は男を見た
職場へ向かう途中
あなたは人生に希望を見いだせなくなり
耐えられなくなり
電車へ飛び込んだのです
そんな馬鹿な話があるかよ
俺には家族も愛する人たちもいる
責任や義務だってある
自ら飛び込むなんて・・・
ありえない
あなたは酷く病んでいた
鞄の中にはいつも遺書がしのばせてあった
それだけじゃない
私は証拠を握っている
死神は俺を見つめると
俺の魂を右手でギュッとわしづかみにし
歯磨き粉のチューブみたいに捻り出した
白い命の
軽やかなカーブと
カタマリとヲ
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