着ぐるみ同盟/オダ カズヒコ
ぐるみの彼女は
往来のサラリーマンや
女子中学生や
幼稚園児に
「クマ!」
と人差し指を指され
世間に見捨てられた
ゴミ箱の中の捨て猫みたいに
まるごとミスディレクションの
告白の中の主人公みたいに
電車に乗り
つり革に思考させ
扉の開閉に食い込み
駅前で回転している
からっ風に吹かれたピンクのビラみたいに
タァーーーっと階段を駆けおり
そして証言台に登るように
着ぐるみ仲間と抱き合い
「待った?」
「今来たところー」などと
挨拶をかわしあい
不安だからァと
お互いの中身をもう一度
チャックを開けて確認しあい
喫茶店でいっぷくお茶をしている
ピンクのクマと
紫色の小ブタと
コーヒーカップの湯気と口紅と
着ぐるみ同盟
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