無傷すぎる/北井戸 あや子
 
生きるという事は誰かを傷付けるという事

産まれるという事は母親に痛みを与える

成長の過程においても、幼い内は親の手を煩わせ
昔、街の雑踏に何気なく捨てたペットボトルを
誰かが踏んで怪我をすると
何故当時の自分は思い至らなかったのか

たくさん傷付けて生きてきました

草を何も思わず踏んできました

32回石ころを蹴った挙句線路に身投げさせてしまいました

汚い言葉を嘔吐して、便器に流しました

きっと今も誰かを傷付けて、生きています

風呂場には生傷だらけの自分がいたけれど
どれもこれも痛みは無く
傷付けた誰かを差し置いて
私は無傷です
反吐が出るほどどこまでも
無傷
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