輪廻的港町/這 いずる
憂き雨
ぱらぱらと
はねる雫を
うっとおしく思い
引き網
ピチピチと
跳ねる鱗を
うっとおしく思い
けったくそ悪い匂いだと 何十年も感じて育った
実入りの悪い商売だと 何年も計算していた
それでも漁はせねばならなかった
収穫物をさばいて
怒鳴り声の飛び交う市で
凍え凍る午前五時
煙草に火をつけた
その瞬間だけ明るく温かく
ほんのりと凍りついた心の周縁が
とける気がする
手をポッケに突っ込み
蒸気船のような煙を吹き出す
何人も何人も
同じように思い
何人も何人も
同じように生活し
何人も何人も
こんな風に煙を吹き出し
何人もが同じく網を引いた
そうだ、その繰り返しだ
俺もその繰り返しの一端
だ、なーんて。
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