…午後から首都圏は雪/もっぷ
 
あなたのために
と前置きしてもらわないと
わかることができない
愚図な女の子がいて
街頭でこの年の終わりにも
募金箱をかかえている
お金は思っていたように
集まるし
思っていたように
集まらない
女の子は
良く晴れた空をみあげながら
お願いします
を繰り返している
周りの子たちの箱が
どんどん美しく輝き出す
女の子の箱は
どんどんくすんでゆく
女の子も
どんどんくすんでゆく
しきりに空を気にしてみあげながら
女の子は(も)お願いします
を繰り返し
やがて百年ほどが経った
空が 空が 空が
女の子が待っていたあの色に変わってきた
降ってくる
確信をやっと懐けたらしく、だから、
女の子の募金箱が光りを放ちはじめた
女の子も光りを放ちはじめた
降ってきた
、思い出すとそれが百年前に
募金をはじめた理由だった
産まれた街で
いま確かに聴いている
あなたのために
わたしのためのその先を
みせてくださいとつぶやきながら
女の子は十二月の窓から
さやかな翼を持つ小鳥になって飛び立った


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