挨拶/北井戸 あや子
 

天の川に流された夏は
星がとても綺麗な夜でした
鳴いて鳴いて死んだ蝉を
キャンプに行く途中の家族の車が
知らない内に轢き潰したその夜に
また蝉がパタリと地面に落ちました
夕立ちに見舞われて
急ぎ足に墓場をあとにした
寝苦しいお盆の夜
涼みに網戸に近づくと
ヤモリが一匹へばりついていたので
少しの間眺めていたら
早く寝なさい、と声がしたから
羽虫を喰おうとしているヤモリに
おやすみなさい、と
挨拶をして
眠りに就きました
おやすみなさい、と
言って廻る
瓜売りの少女は
真っ赤にぱっくり口開けて
押さえ付けられ
まだ早い
おやすみなさい、を
させられました









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