眼球と蛹/高濱
硬い枯葉を踏み拉きながら
散文的な午睡に遊ぶ、少年期
定規の下の眼球、
或は乾燥花を敷詰めた球瓶装置
靴の花瓶に一輪挿の薔薇があり
田舎町――それは不安の町だが私には一抹の安寧を与えてくれる
嘔吐する度にみずみずしく成熟する
梨の肉体は
綻ぶ詩集の果敢なる騎行を鋭角の残影に投射しながらも、
第七曜日の黄昏の
酷く苛酷な労働を美しいと言う様な
拘置室に断腸の焼身自殺を見届けることを看守に
――彼は鶏頭の人夫であるのだが――再三に亙り訴求するので
彼は時計を破壊してしまうだろう
窓に聯なる優美な魚は惑溺する水に於て
詩人達のサロンを俯瞰している
小卓には葡萄酒が零れ滴り落ちながらそれの一縷の血脈を酩酊する
放蕩は豚小屋に
絵葉書は鳩舎の檻に
単純機械の実象には網膜の撮影機材が縦横に梁を展ばす
扉に磔け緊め上げられる鸚鵡貝の殻は
覗窓のただなかに於て彎曲する建築物と閑散たる赤い市街地を嘲い
降り懸かる抽象と膠の人物像は
アリアドネの熟睡に試みられる印象の紡績を凡その観念や諦観より劃てるのであろう
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