母八十二/たま
 
着ぐるみの人の世に生きて熊さんは今年定年なんだという 

嫁の半ばっちゴムが弛んで履き頃とゆずってもらって二年

2032年まで予約でいっぱい死に切れません団塊のひとは

親指赤切れてギターが弾けない団塊のソングライターぼく

魂(たましい)なんてどこの馬の骨だかわかりゃしないと卑弥呼がいう

ににんが四 ごろく三十 さざんが九 しし十六で 母八十二

あの世の手前に河が流れていてあぶないからとプールに通う

ゆく年もくる年もみな等しいと信じています特老のひと

八十過ぎたらシートベルトはいらないデイサービスの往路

カラーは三万モノクロ一万五千、母の遺影
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