弱さもずるさも/永乃ゆち
彼を好きだった
弱さもずるさも
最後の日には
責められない笑顔に
悲しみも怒りも伝える事すらできず
ただ
ひたすら爪を噛みながら
ありがとうとだけ言った
彼のあばら骨の一本は
きっとわたしの体にはなく
彼女にあるというだけの事だろう
彼は最後まで優しかったから
泣けもしないで
怒りも悲しみも
どこへも着地できずに
飲み込んでしまったので
喉は焼けるように痛かった
責められない笑顔
責められない曖昧
責められない弱さ
責められない卑怯
きっと誰もが持っていて
いつも誰かが傷付いている
月が隠れたら
真っ暗な部屋の中で
少しだけ
泣こうと思う
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