綺想纏概-1 異言語との結合に即いて 後/六崎杏介
今回は他国言語との結合法である、表面訳(同音訳)について解説します。
表面訳とは、他国言語から、同音の自分が使用する言語の言葉に置きかえる作業です。
音を拠り所に言葉は二重像を持つ様になり、それが綺想を誘います。
例をとれば、(例1)[gear-戯夜]とした時は「歯車仕掛けのサーカスの夜」
(例2)[factory-浮飽く鳥]とすれば「世界卵を産む鈍重な鳥」
(例3)[wine-輪淫]に訳せば「ヨーロッパ的痴宴」
(例4)[gold-語折る怒]として「沈黙は金」乃至「怒れる独裁の王冠」etc.
などのイメージに飛躍し、それを文章に潜ませることも可能です。展開する事も。
椎名林檎氏も「輪廻ハイライト」という曲において表面訳の音声技巧的な見事な例を書かれています。
一詩編全体を表面訳で書くよりは、イメージの助として部分で使うのも、私達の想像力の刺激になると思います。同音訳、それは結合というよりは融合、じつに淫媚な詩神への祈りの歌なのです。
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