鈴/竹森
 
葉を口にしたいと思うのだけれど
出かけた言葉は
遠い車の走行音に 喉元まで押し戻されてしまう
静寂を見計らっては再開する 草々のざわめきは
恋人達の密談の様で 邪魔をしては悪い様に思えてしまい―――

(愛されながら 惜しまれながら 死んでいったのだろうか?)
(僕はこの小鳥を 生きている内に 愛してみたかった・・・。)

藪の向こうに点滅するランドセルの赤と黒に 右も左も無い
お前の毛並みを整えながら夕暮れを迎えようと 手を伸ばせば
二つの肉体が触れ合う寸前 二つの影が 上も下も無く溶け合い
思いとどまった私は 伸ばした手を お前のすぐ傍に添い置いた

ランドセルは揺られながら 団欒へと繋がっていくのだろう
翻る緑葉の濃淡と隙間 チリン チリンと 鈴が鳴る
嗚呼 小鳥の死体よ 鼓膜を無くした人間の片耳よ
お前の影はこれから音も無く この指先へと伸びてこい―――
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