世界の模様/森川美咲
昔
この世にはあらゆる境界がなく
混沌としていた
すべてのものは
ないがしろにされることもなく
また
特にとりたてられることもなく
それぞれあるべき姿で
混ざりあっていた
混沌なればこそ
時に美しい模様が生まれ
そして消えていった
やがて人々は境界を築き
何者かがそこを越えることを拒んだ
世界は単純化され
うまく当てはまらないものを排除した
境界の「内側」で
人々は叫ぶ
我らこそ正義
この美しき世界のために
あるべき姿で
共に歩もうぞ と
世界のあるべき姿を取り上げておいて
「内側」でごちゃごちゃやっている
そうこうしているうちに
彼らの「世界」はどんどん狭くなる
消えない模様を描いた罰だ
「外側」には今でも
昔と同じく
美しい混沌が広がっているのだが
もはや彼らには見えない
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