百鬼繚乱 < 4 >/nonya
 



どいつもこいつも
汚物を見るような目つきで
俺を避けて通る

負け続けた肉の
成れの果てだよという囁きは
たぶん空耳

好きで蓄えた脂身の
どこが悪いと開き直り
安酒に正体を失って
ぬらりぬらりと千鳥足

つれなく閉ざされた
商店街のシャッターに
ぐんにゃり寄りかかった俺を
月だけが見ていた





SUNAKAKEBABAA(砂かけ婆)


砂はいつも
逃げようとする
人の
時の
てのひらから

砂はいつも
逃げようとする
人の
空の
吐息から

貴方もいつも
逃げようとしていた
私の
縁の
腕の中から

砂のように
何も残さずに
逃げおおせると
思ったのだろうか

貴方を思い出すたび
私の身体のすみずみで
逃げ遅れた砂が
軋んだ音をたてて
すすり泣く



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