百鬼繚乱 < 4 >/nonya
どいつもこいつも
汚物を見るような目つきで
俺を避けて通る
負け続けた肉の
成れの果てだよという囁きは
たぶん空耳
好きで蓄えた脂身の
どこが悪いと開き直り
安酒に正体を失って
ぬらりぬらりと千鳥足
つれなく閉ざされた
商店街のシャッターに
ぐんにゃり寄りかかった俺を
月だけが見ていた
*
SUNAKAKEBABAA(砂かけ婆)
砂はいつも
逃げようとする
人の
時の
てのひらから
砂はいつも
逃げようとする
人の
空の
吐息から
貴方もいつも
逃げようとしていた
私の
縁の
腕の中から
砂のように
何も残さずに
逃げおおせると
思ったのだろうか
貴方を思い出すたび
私の身体のすみずみで
逃げ遅れた砂が
軋んだ音をたてて
すすり泣く
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