妖怪/イナエ
 
 妖怪


都会の妖怪は
昼間に出るらしい
夜は明るくて
隠れる場所が無いから

たとえば
人の途絶えた午後
ビルの屋上に出るドアの
前に佇む影

あるいは
休日の事務室に
並んだデスクの前で
腰を下ろして
失った首を胸に抱え

あの日の
分岐点での選択に
後悔だけが繰り返され
沸き上がった泡(あぶく)が
ギリリ ギリリと
歯ぎしりをたてている

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