寿司桶/小川 葉
 


いくらの軍艦巻に
乗組員、数十名

生まれることを許されなかった
鮭の卵たち

テレビのニュースに
独裁者

彼を許すまじと
人々はその軍艦巻を
一口にほおばりながら
人を批判し
批評されていた

通夜の晩
独裁者は誰なのか
今は知らない

みな等しく
この世に生きているものだから

その時
遠い親戚から
ひとつの電話

今、生まれたよと
喜びの声

寿司桶には
まだ軍艦

今か今かと
その時を待っている

通夜の晩に


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