寿司桶/
小川 葉
いくらの軍艦巻に
乗組員、数十名
生まれることを許されなかった
鮭の卵たち
テレビのニュースに
独裁者
彼を許すまじと
人々はその軍艦巻を
一口にほおばりながら
人を批判し
批評されていた
通夜の晩
独裁者は誰なのか
今は知らない
みな等しく
この世に生きているものだから
その時
遠い親戚から
ひとつの電話
今、生まれたよと
喜びの声
寿司桶には
まだ軍艦
今か今かと
その時を待っている
通夜の晩に
戻る
編
削
Point
(5)