沼/島中 充
 
雑木林の木々に囲まれた湿った寂しい道を登ると
不意に緑の沼に射すくめられる。
ホテイアオイがゆっくりと揺れ ボーボーとウシガエルが鳴いていた。
あの年 この沼にまるまる肥った川エビがわいた。
子供たちは網ですくい取り 村人たちはおいしいおいしいと食べた。
そしてゆっくりと緑の底から 女の死体が浮き上がってきた。
髪の毛や顔にびっしり川エビが群がったおんなの裸体。

君が殺したのだ 君が
たとえ 僕が手淫を教えたとしても
たとえ 僕が雑誌を貸したとしても
たとえ 僕たちが
解剖皿の白い腹の蛙を見ながら
女の死体がほしいと話し合った事があったにしても
死体の陰部を鉛筆で開き
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