新しい波/大島武士
この地上の幸福の量と不幸の量が
ずっと一定の気がしてしまったら
空の彼方を眺め夢見よう
新しい波が起こる
いつの時代も
日々の暮らしに溺れ続ける人々をさらうように
「時代」という言葉さえ忘れ去られた
新世紀の始めごろの日々の中で
十年経ってもほとんど変わり映えしない
古い世紀の記憶が積み重なった
古本屋の棚の中から
少しずつ 新しい波が起こるから
住んでいる街の
長い時間の地層に埋もれた
神さまたちを
海の向こうから運ばれてきて
異国の言葉の中に隠された神さまたちを
心の中の地層に潜ませて
内なる宇宙に潜ませて
確かな日々の暮らしの中で
何かを奏
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