胸のせせらぎ/殿岡秀秋
行く手を遮る人のように
不安の影がたちこめる
追い払うために
小川のほとりに立つ
苔が敷き詰められた庭の清流
岩の向うに竹林の藪
たたずめば
火に群れる虫のように
影たちがどこからともなく
集まってくる
袋をかぶせて小さくして
笹の葉にのせて
せせらぎに流す
蛍も消えた闇に
見送ったのに
隙間から来る風のように
影は戻ってくる
影の素は人であるが
ぼくの妄想で膨らんで
ぼんやりとした
恐怖になってたたずんでいる
また袋におしこんで小さくして
笹の葉によこたえて
せせらぎに流し
闇に消えるのを見送る
何も起きていないうちから
心配するのをやめればいいのに
ぼくはいつのまにか
小川にきてしまう
それでもせせらぎの
風がしだいに
おだやかになり
陽がさし
ウロコを光らせて
魚が勢いよく跳ねる
仲良しの笑い声が
泡となって
浮かんでくる
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